上田浩之のインドネシア奮闘記ブログ

インドネシア スラウェシ島 バンタエン という周りに日本人がいない地で生徒17人への自動車専門技術、ソフトスキルの教育を行い日本でも通用する自動車エンジニアに育つまでを綴ったブログ

残り2ヶ月で2年間のインドネシアでの活動が終了します


出来るだけ何もしないということ
 
残り2ヶ月で、BLKバンタエンでの2年間の活動が終了します。
この期間で自分ができる事はなんだろうかと真剣に考えました。
最後のこの期間は特にインストラクターの成長に焦点をあてようと思いました。
そう考えた結果、できるだけ何もしないという考えにたどり着きました。
 
これには理由がいくつかあります
 
・インストラクターの問題解決力の成長
・インストラクターの自主性の成長
・インストラクターの学級経営のコントロール
 
の3点です。
 
1〜3学期は私が発言する機会が多かったのですが、4学期はなるべく生徒への直接の発言は抑えるようにしています。
これがどのような結果に転ぶのかは、少し賭けのようにも思っていました。
自分達で自主性を発揮して、やる気になってがんばってくれるのか、もしくはそれでも私に頼って何もしなくなるのか。
このプロジュエクトの一番の目標はインストラクターの育成です。
そして、立派なインストラクターが育てば、もちろん立派な生徒が育ちます。
怠慢なインストラクターだと、生徒も怠慢な生徒になります。
生徒はインストラクターの鏡だと思います。
 
 
 
現状では、私が発言をすると発言力が強いので、みんな言う事を聞きます。
では、もし私が何も発言をしなくなった時に、生徒達は自主性を持って行動ができるのか?
もし、問題が起こった時に、インストラクターが問題をきちんと解決する事ができ、生徒達を正しい方向に導くことができるのか、を試してみたかったというのもあります。
 
組織を作り変える
 
そのままの仕組みでは、うまくいかないと考えたので、4学期に入り仕組みから検討しなおしました。
問題が発生した時に下から上がってくる仕組みと、判断を下す時の上から下への仕組みです。
その仕組みが潤滑に回るように、報告・連絡・相談は必ず実行するという事も徹底しました。
 
例えば、実習中に実習教材が壊れた場合に、生徒は早急にグループのインストラクターに報告をします。
そして、グループのインストラクターはリーダーの改善オーナーに報告します。
私は改善オーナーにアドバイスするアドバイザーという立場にしましたので、改善オーナーから相談があった時にだけアドバイスをするという役割です。
そして、その発生した問題に対して、緊急の事態であれば、授業終了後に緊急ミーティングをインストラクターで実施をします。
 
なにが、問題だったのか?
なぜ問題が発生したのか?
真因は何か?
今後の対策は?
 
このような考え方はPDCAの授業でしっかりと学んでいますので、正しい方向で考えることができています。
私はなるべく口を出しません
そこで、出た対策を持ちながら、生徒達と話し合います。
生徒達に対しても、すぐに答えを出すような事はしません。
しっかりと生徒達だけでも、話し合いを実施し、自分達で解決するように考えてもらいます。
事前にインストラクター同士で話し合っていますので、きちんとしたアドバイスも生徒に対して行う事ができます。
そのようにして、
 
問題発生→分析→対策→問題発生→分析→対策
 
が繰り返し行われるような仕組みになりました。
 
インストラクター達の話し合いで決定した取り組みに対して、生徒達への伝達方法は、インストラクターの各PDCAの担当者から生徒に伝えるようにしています。
安全についてであれば、安全作業担当者から、授業に関する事であれば、授業段取りの担当者からという具合です。
それぞれの担当者から伝える事で、伝える方も身が引き締まります。
 
以上のような仕組みを作り、4学期は実施しています。
 
「4学期は私は何も言わないので、自分達で考えて行動して下さい」
 
という事もインストラクターに対してしっかり伝えてます。
 
初めは、これはどうしたらいいですか? っという質問が頻繁にあったのですが、
 
「今後は自分達で解決していかないといけないので任せます」
 
としか言いませんでした。
そうする事で、自分達で考えて行動する事が少しずつできてきました。
 
生徒達に対しても私からはなにも言いません。
中にはだらけ始める生徒もいましたが、それでもほっておきました。
そうすると、インストクターの中で自然と、あの生徒が少しだらけ始めているから、なんとか解決をしたい。と言って、自分達だけでミーティングをするようにもなりました。
時には、インストラクター同士で衝突する事もあります。
 
「仕事がないのだったら、自分から探さないといけないじゃないか!!」
 
といった内容で改善オーナーがインストラクターを叱っていました。
これはすばらしい成長だと思います。
 
改善オーナーがしっかりと、他のインストラクターを抑えているので、他のインストラクターもしっかりと改善オーナーの言うことを真面目に聞きます。
インドネシアでは、上下関係をしっかりしておかないとナメられます。
ナメられると、もう何を言っても言うことを聞きません。
 
ですので、インストラクターの中で最も意欲的で、全体が見えるアンディラさんを必然的に改善オーナーという立場にし、他インストラクターよりも一つ上のポジションにしました。
アンディラさんもそのポジションによって、他インストラクターに意見をしっかりと言えるようになりましたし、リーダーとして、しっかりとインストラクターの話しを聞き、意見を尊重するように努めています。
 
全体的にうまく流れてきたので、現在では、私は毎日工場を見回ったり、授業の中で気になった時に、その都度アンディラさんを呼びます。
 
「ここが汚れとんやけど、なんでなん!?」
「生徒が手を余しとんやけど、なんでなん!?」
 
みたいな事を気になる度に、口うるさく言ってます。きっとうっとうしい事と思います。
その中で、しっかり私の言った事を聞いてくれて、インストラクターのチームで話し合って、その問題を解決しています。
4学期がスタートしてからの、4ヶ月間のインストラクターの成長は素晴らしいもので、このプロジェクトが終了してからも、自分達の力だけで、クオリティの維持、そして、更に改善を繰り返しながら、今以上に高いクオリティで継続する事ができると信じています。
 
嫌われる勇気
 
スタート時から考えている事ですが、生徒に良く思われたいとか、インストラクターに良く思われたいとか、考えた事はありません。基本的には、自分自身の役割は嫌われ役でいいと思っています。
危険な事をした時には、全力で叱りますし、遅刻をすれば、強制的に有無を言わさず帰らせます。
40歳のインストラクター達にも、ダメなものはダメと年下で生意気ながら叱ります。
学校のマネージメントや、校長先生に対しても、筋が通ってない時には物申します。
 
全ては、BLKバンタエンの将来を考えての事です。
厳しく言ってきましたが、結果的には良い方向に進んでいて、みんなからも信頼してもらえているので良かったです。
 
短期滞在専門家のサポート
 
4月は短期派遣専門家で、愛媛トヨタからは柴田さん、愛媛トヨペットからは日吉さんが、2ヶ月間BLKバンタエンで活動をする為にやって来ました。
 
 
 
先日は、それぞれの2ヶ月間の目標を、インドネシア語でプレゼンテーションを実施しました。
自分達は何ができるのか?と色々と考えている事と思います。
2人に対して、お願いする事はいくつかありますが、なるべくは私からはあうして欲しい、こうして欲しいとかは言わないようにしようと思っています。
自分達が生徒達や、インストクターに対して何が出来るのかを自ら考えてそして実行する。
そうした仕事の方が、きっと面白いと思いますし、勉強になるのじゃないかと思います。
 
8週間の内、4週間が終わりました。
生徒達と年齢も近い分、仲良くなるのもとても早いです。
作業中に気がついた所は、しっかりと提案もしてくれているので、とても助かっています。
一生の中で、私も含めてこのような体験はなかなかする事が出来ない貴重な体験だと思うので、1日1日毎日色んな事を感じて、今後の人生に活かせるような体験が出来たらと思います。
 
生徒達の就職試験の実施
 
先日、南スラウェシ州にある、トヨタディーラーのハジカラトヨタが実施する学科試験を受けました。
ハジカラトヨタへの就職試験は狭き門です。
ハジカラトヨタに入社する為には、4つの試験を通らないといけません。
 
・学科テスト
・IQテスト
・体力テスト
・面接
 
以上の4つです。
その第一関門の学科テストの問題は基本的な問題だったようです。
試験終了後の生徒達の表情も明るく、生徒達に聞いてもみんな出来たと言ってました。
 
そして、昨日学科テスト結果がハジカラトヨタ の人事担当より伝えられました。
 
 
結果は、全員合格でした。
 
しかも、ほとんどの生徒が100点に近い点数だったようで、ハジカラトヨタの人事担当も相当驚いていました。
無事に第一関門をいい状態でクリアする事ができました。
今週は第2関門のIQテストも実施されました。
インドネシアはこのIQテストを非常に重要視するようで、他のテストが良くてもIQテストが悪ければハジカラトヨタで整備士として、働く事は出来ません。
図形の問題や、数字の問題、文の問題など、朝から夕方までの1日かけて試験をするようです。
 
今までの2年間、みんな一生懸命頑張ってきました。
整備士になる為に頑張ってきたので、残り3つのテストを自分自身の為に頑張って欲しいです。
そして、誰からも信頼されるような立派な整備士になって欲しいです。