上田浩之のインドネシア奮闘記ブログ

インドネシア スラウェシ島 バンタエン という周りに日本人がいない地で生徒17人への自動車専門技術、ソフトスキルの教育を行い日本でも通用する自動車エンジニアに育つまでを綴ったブログ

7月に色々と活動した事

EFIの授業のスタート

アジアンスキルの南スラウェシ州大会から、早くも一ヶ月が経ちました。

この 一ヶ月間は、エンジンのEFI(インジェクター使用の車)の授業を集中的に行いました。

現在の車はエンジン、駆動装置、走行装置と全ての部位においてコンピュ ーターやセンサーを多く使用しています。 このコンピューターやセンサーそして、 それらの指示に従い実行する各アクチュエーター(モーターなど)が不良になるせ いで、エンジンがかからなかったり、加速しなかったり、走行時に安定しなかった りと、様々な不具合が発生します。自動車の部品を交換するという作業は多少の経 験があれば、誰しも可能なのですが、この不具合を発見する事(トラブルシュート) が整備士をするうえで難しい仕事になります。

その為には、たくさんの要因を把握しておかないといけません。全てのセンサー、 コンピューター、アクチュエーターの正常な作動を理解する事、そして、不具合が 発生した時に、その現象に対して、何が原因であるのかを特定する為にお客様に問 診する。

そして、不具合の原因を絞っていき、各電子部品を一つずつ点検して、不 具合部品を特定する。その様な非常に高度な技術がトラブルシュートには必要にな ります。まさに自動車のお医者さんです。

その勉強の初級を7月は集中して行いました。

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過去の自分と照らし合わせて

授業スタートから1年が経ち、言葉もだんだんと理解でき始めました。

1年前で はなかなかうまく伝える事ができなかった学科の授業も、今では冗談も交えながら 楽しく、そしてわかりやすく授業を行う事が出来るようになってきました。

そうな ると、授業の教え方などで幅が広がります。そして、授業を行う方も面白くなりま す。この方法だとわかりやすく教えられるとか、ここにちょっと冗談を入れると生 徒が飽きずに、眠たくならずにすむなど、色々考えながら授業を行っています。

自分が教える立場になり、高校や専門学校で、ふざけて授業を受けていた自分を 思い出しました。

高校ではふざけて結果4階のガラスを割ってしまったり、髪を一 時期金髪っぽくしたり、授業中弁当を食べたり、漫画を読んだりと、今思うと真剣 に教えてくれていた、先生方に申し訳ない事をしたととても反省します。

そんな過去の自分と今の生徒達を比べると、生徒達はとても真面目に授業を受け ています。今では生徒達全員が同じ目標に向かって進んでいます。

インストラクターAさんの存在

しかし、インストラクター候補生のAさんという人だけは、1年経ってもなかな か制御ができませんでした。

実技の授業中に、受け持っているグループを放置して フラフラといなくなったり、お願いした仕事をいつまで経ってもやりません。

しか し、言葉ではいつも立派な事を言います。

そんなAさんもこの7月から変わりつつあります。

少しずつ自分の立場、責任感、 将来像が見えてきているように思います。一番の変わり始めた要因としては、他の 生徒が真面目に一生懸命勉強をして、どんどん成長する姿を目の当たりにして、自 分にも火がついたようです。

今ではインストラクター候補生達よりも生徒の方が車 の事をより理解している場面もあります。

現在はインストラクター候補生が試験を作成して、試験官を行うようにしていま すが、今後は定期的に生徒も彼らにも学科、実技テストに参加してもらい、生徒と 同じ内容で試験を受けるようにも考えています。

3学期からは授業が難しくなって くるので、勉強している生徒と勉強していない生徒の差が、これからどんどん開い ていきます。

それはインストラクター候補生も同様なので、彼らにプレッシャーを かける意味でも、この試験を行いたいと考えています。

問題解決の方法とは?

問題を解決していくにあたっては、現状を理解するという事がとても重要になっ てきます。

現状を理解していないと、解決策を立案・実行しても、うまくヒットし ません。

解決案が10個あったとしても、それぞれ1ずつ行き当たりばったりで行 うと、時間もお金も無駄にしかねません。

ですので、現状をしっかり把握して、そ れに対してしっかりと問題分析を行い、裏付けがをしたうえで解決案を作成して実 行します。

そうする事で、問題に対して初めてうまくヒットします。その解決策が できるまでは、しっかりと時間をかけていく事が成功の要因になると思います。

そ して実行の際には全力で実行する。その時間の使い方は非常に重要だと感じていま す。

SROPの実施

自動車課の授業にあたり、愛媛トヨタトヨタ自動車の仕事の仕方をとても参考 にしています。

例えば、ソフトスキルの授業では、現在生徒を中心にSROPのチェック項目を作 成しています。

各持ち場のPDCAについて、最低10項目のチェックリストをピッ クアップし、全員でディスカッションをしながら、5項目までを絞り込んでいく事 を行なっています。

計画では、毎週一回各担当場所、インストラクターで各担当場 所13箇所のチェックを行い、×がついて項目についてACTIONを行う。

そして、 ずっと◯の項目には更にレベルアップした項目を取り入れるような計画にしてい ます。

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私の考える守破離とは?

1学期・2学期は『教えられた事をしっかり守る』3学期目の目標は『自立』と 考えています。そして、4学期目は『創造する』大きく分けてその3段階で考えて います。

茶道や武道の考え方でいうところの守破離※です。

※修行における段階を示したもの。「守」基本を確実に身につける段階。「破」基本に他を取り入れて発展させる段階。「離」 元の流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。

トヨタの高級車セルシオの修理

授業以外では、バンタエン県知事車両のセルシオの修理を行いました。

このセル シオは4年前に日本からインドネシアに送られた車両です。

インドネシアへ送られ る前に、整備を行いました。

私が記入したオイルステッカ ーが今でもそのセルシオに貼ってあります。まさかこの4年という時間と、インド ネシアという日本からはるか離れた所で同じ車両を整備するとは、思ってもいませ んでした。このセルシオとは何か縁を感じさせられます。

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緊急車両の使用方法の指導

そして、緊急車両である、救急車やはしご車の整備も、インストラクターを中 心に少しずつ行なっています。先日はワジョウ県という、バンタエンから車で4時 間程離れた地域の車両が入庫しました。

車両の使い方がまだ分からないので、指導 をして欲しいという事でした。

日本語で書かれた取り扱い方法を見ながら、一つ一 つ説明を行いました。救急車も消防車も毎日メンテナンスや、トレーニングを行い、 緊急の時にいつでも出動できるような仕組みを作って欲しいと思います。そして、 日本から送られた緊急車両で一人でも多くの命を救えるように、心から願っていま す。

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ハジカラトヨタでのインターシップの実施

8月からは生徒全員がハジカラトヨタでのインターシップを行います。

このイン ターシップは生徒達にとって大きな一歩になると思います。

中には今までやってき た事が正しかったと自信たっぷりで1ヶ月間を送る生徒もいるだろうし、はたまた、 今までの努力では全然ついて行けなかったと思う人もいるだろうし。今の自分のレ ベルと、実際にお客様からお金を頂いて仕事をしている、エンジニアとの差を知る 良いきっかけになると思います。

スタートから1年経って、まさに守破離の破の段 階を学ぶのにいいタイミングだと思います。

もちろんインターシップには毎日の課題も出していますし、インターンシップの 最後には店舗全員の前で1ヶ月間学んだ事をプレゼンテーションする事にもなっ ています。
生徒一人一人が自立できるように、なるべく口を出さずに後ろの方から、 暖かく守っていきたいと考えています。